under design Special Talk #04

川口

特別対談ビジネスとアートの新たな未来。

ワーク&アートスペース事業のフラッグシップとして位置づけられているアンダーデザイン名古屋オフィスに第二弾として導入されたアート《TIMES2019》。代表、川口は第二弾として選んだこの作品に何を感じたのか。そしてワーク&アートスペース事業が目指す先はどこか。作者である現代アーティスト笹岡敬氏、富山県美術館学芸課長の八木宏昌氏、アンダーデザイン代表の川口の三者でビジネスとアートの関係を考えていただきました。

デザインとアート、そしてビジネスの新たな関係

八木

八木まずデザインとアートの関係でいうと私は学芸員という職業柄、デザインとアートをどう捉えるのか自分で結論を出さないといけない立場にいます。現代はデザインとアートはとても密接になってきていると感じています。端的に言うと目的的なものがデザイン、作家の内側に委ねられたものを表出しているのがアートと言われていますが、最近は無目的で目的的でないデザインもでてきて区別がはっきりしなくなってきています。またデザインなくしてアートは成立しない、一つ箍を外せば同じ領域で共存するものになっているとも言えると思います。

廊下
笹岡

笹岡機能をどう解釈するのかだと思います。アートには機能がないと言われますが最近ではソーシャルアートなど機能を求められているものもあります。またアート作品はもともと機能を感じられないものであっても対峙する人との関係性の中で機能が生まれてくることもある。そこをうまく仕掛けていける作品が最近は評価されつつありますね。今回、川口さんから相談を受けてTIMES2019のコンセプトをお話ししたときもそういう意図がありました。

川口私がTIMES2019を見たときも最初はわかりませんでした。そしてわかったとき本当におもしろくワーク&アートスペース事業のコンセプトと合致する作品だと感じました。ビジネスとアートは対極のように思われがちですが、ビジネスマンも固定観念に縛られず新たな発想を持てれば世の中はもっと豊かになると思うのです。日本には歴史が長く技術力があり、財務基盤もしっかりしている優良企業が沢山あります。しかし何かが足りないとすればそれはクリエイティブな要素なのではないか、そう感じています。日本のオフィスやビジネスパーソンもアートに触れる機会を増やしクリエイティブな脳を刺激してみたい、そう思ったのが発想の原点です。

八木

八木川口さんはこれからオフィスにアートを提案していくような立場になっていかれるわけですよね。

川口はい。今名古屋オフィスにある《c》も《TIMES2019》も販売しているアートですが、それ以外にオフィスデザインの要素としてお客様に合うアートの選定があります。お客様ごとに合うものをお探しするという場合でも、自分が良いと思う作品をただ入れるということではなく、そこで働く人とアートの間に関係性が生まれる作品でなければ生きたアートにならないと考えているんです。この「オフィス×アート」のコンセプトを思いついたとき、アーティストが求める活躍の場は美術館やギャラリーでオフィスは受け入れられないのではと思いました。しかしアーティストの方々とお話ししていくと、興味を持ってくれる方もいることがわかりました。アーティストとビジネス、双方にとって新たな関係を生んでいきたい。だからこそ、このようにアーティストやキュレーターとお話しする場を設けたりしています。

アートは必要な寄り道

笹岡オフィスの目的は基本的には働くことであり、仕事がまわっていくということだと思います。もちろんそうなのですが目的を追い求めたときには、必ず目的以外の隠れている部分を抱えているはずです。TIMES2019でいうと光るという目的を目指したときに、必ず消えている部分が存在する。それを感じる感性がないと、光ること、動くことも気づけない。これは目的を追い求めて活動するビジネスにも当てはまるのではないでしょうか。この作品がそういうモデルを示せればと思っています。

八木私はビジネスのことは専門外ですが、このコンセプトを聞いたとき二通りのことを考えました。一つは先ほどからもお話ししている何らかの目的的な場所が設定されたとき、その場所にアートがどうはまっていくのか。アーティストはそのベクトルを感じながら作ろうとするかもしれない。それは方向性を持ったデザイニングされたアートになると思いました。そしてもう一つ真逆のことも考えていて、アートが住空間に与える影響とは何かということです。たとえば掛け軸であれば、調度品というはっきり見えている目的があります。しかしその一方で見えていない目的もあるのではないかと思うのです。原理がわかればそれを具体的に何かに役立てていこうと人は考えるものです。ただTIMES2019の場合は、普段人が物をみている意識と違う、別の認識をしながら見ないと理解できない作品になっています。ということは発想の切り替えが毎回起こります。それによって、関連して気づくことがあるかもしれない。「これがこう見えるということは、今自分が考えていることにもこう応用できるのではないか」と普段思わないことを喚起させる起爆剤になることがあると思っています。

川口

川口そうですね。みんな自分の次元の中で生きているものですから。アートがおもしろいのは、自分の固定観念や見えている世界を超えて「なんだこれは」という感覚を感じられること。そこから気づきがあったり、発想できる可能性があるということだと思います。

作品

八木それは、あらゆる生活においてアートが目的ではないけれど人に及ぼしてきた影響だと思います。表には出なくてもアートがあることでより良く生きられた人もいるだろうし、自分の将来が変わった人もいる。物事の最短距離を示さないおかげで別のものが体得できたりする。幅を持たせたり寄り道をしたり、そういうことがないと世の中は成り立っていかないし、すさんでいく。アートの意義はそこにあると思います。

川口そういう感覚を少しでも日本のビジネスの世界にも取り入れていきたいですね。

【特別対談】
アーティスト笹岡敬×富山県美術館学芸員八木宏昌
「現代アート《TIMES2019》が持つ余韻」」

笹岡 敬

笹岡 敬Sasaoka Takashi

大阪産業大学 デザイン工学部 教授

80年代より『Waterシリーズ』『Luminousシリーズ』『Reflexシリーズ』などのインスタレーションで水や光、熱といった無機物とそれに関するプリミティブな原理や簡単な装置を使って余情性のある空間を作り出している。
この余情性とは文学的な意味ではなく、無駄を省いた単純な構造の作品が空間を分割することによって生み出される「場」の感覚と、装置が作り出す音や光を待つ微妙な「間」によって、見る者のなかに現れてくる意識の流れのことである。ドイツ、オランダ、ベルギー、韓国など国内外で展覧会多数。 98年にCASを数名で発足。2001年より特定非営利活動法人キャズ運営委員長。海外のオルタナティブアートシーンとの交流を進めている。

八木 宏昌

八木 宏昌Yagi Hiromasa

富山県美術館 学芸課長

1991年より、富山県立近代美術館学芸員として、国内外の近現代美術を中心とした展覧会に携わる。2000年から富山県水墨美術館学芸員として日本美術の企画展を担当。2010年に再び富山県立近代美術館に戻り、現在にいたる。

川口 竜広

川口 竜広Kawaguchi Tatsuhiro

アンダーデザイン株式会社 代表取締役社長

大手通信建設会社の技術者としてキャリアをスタート。続く独立系大手IT商社では営業として複数の大規模ネットワークシステムの提案・販売等に関わる。その後、経営学を学ぶため米国ミシガン大学大学院に留学し2007年にMBA(経営学修士号)取得。 帰国後、旭コムテク経営企画室を経て2010年に旭コムテクの子会社であるアイネットテクノ社長に就任、2012年からは旭コムテクグループ社長に就任する。同社の改革の中で2018年にグループを合併、リブランディングしアンダーデザインへと社名変更、新ビジョンを発表する。デザインやアートへの興味から自ら同社オフィスのコンセプトをディレクションし、倉庫を改装したプレミアムサービスセンターがGood design賞を受賞。現在はロサンゼルスや中目黒にオフィスを開設しワーク&アートスペース事業など新規事業の展開を進めている。