under design Special Talk #03

特別対談現代アート《TIMES2019》が持つ余韻。

ワーク&アートスペース事業のフラッグシップとして位置づけられたアンダーデザイン名古屋オフィスに第二弾として導入されたアート《TIMES2019》。時間をテーマに、物体と現象との間にある余韻を感じさせるこの作品は鑑賞者に何を語りかけるのでしょうか。対談の前半では、作品の魅力を作者である現代アーティスト笹岡敬氏と、富山県美術館学芸課長の八木宏昌氏に語っていただきました。

時間や物を認識するとは?

笹岡2

笹岡2年ほど前から時間をテーマにした新シリーズを発表してきました。前回の作品は映像だったのですが、シリーズ全体を通して時間に対する認識のあり方、時間に限らず人が物や事を認識するとはどういうことなのかということを作品を通して考えたり、感じて欲しいと思っています。今回はカウンティングをテーマにTIMES2019という5つの作品が生まれました。

作品
八木

八木これまでも笹岡さんの作品をみてきていますが、見せる部分と隠す部分というのがいつもコンセプトでありますよね。その在り方が今回の作品では時間をテーマとして成立していると感じました。時間といってもやはりアートなので、笹岡さんの作風の特徴である体験型の視覚をキープをしながら、基板や蛍光表示管などを使いおもしろい作品ができたと思いました。

笹岡そうですね。自分も作ってみてしっくりきている感じはしていました。

八木私の場合、事前に笹岡さんからこういう作品だと聞いて頭の中では理解していたつもりでした。ですが、実際に作品と対峙したとき、しばらく解読できなかったんです。「え、これはわからないぞ」と(笑)。その時この作品はより人間の能力に訴えかけるものになっているんだなと思いました。だいたいのものは頭で理解していれば、見たときにこういう仕組みになっているのかとわかって納得できるのですが。

笹岡そうですよね(笑)理屈でこういうもの、だけでは済まされない感覚が生まれて良かったと思います。「それだけ」ではない違った見え方がしてくる。わかっているつもりだけれどわからない、という部分が重要ですね。

シンプルの奥にあるもどかしさ。

八木

八木この作品が成功していると思うのは謎が解けておしまい、ではないところですね。まずわからない、どこかのポイントでわかる、そしてわかるようになったのはなぜだろうと考え始める。視覚って何だろう、なぜ今わかったんだろう、と見た人が自問自答し始める段階がくるんです。実際に目の前で繰り広げられている変化は頭で理解するのと体が捉えるもので差異があり、そこが物理実験ではなくアートだと感じます。

笹岡作った本人でも意識をちゃんとしないと見えないんですよ。そこは鑑賞者と同じ立場です。一番早いカウンティングは自分でも全く認識できないですしね。そういうあり方がおもしろいと思っています。

八木そうですよね。作った本人がどうあれ、人間の脳の順応性に委ねられるものになっています。

笹岡いわゆるテクノロジーアートにはインタラクティブなものが多くて、「ある経験」みたいなものが保証されることで作品になります。それがテクノロジーアートの楽しみ方でもある。けれど、この作品にはそういうインタラクティブ性は無くて、鑑賞者自身がどう関わるのか、どういう風に経験するのかによってそれぞれ見え方や感じ方が変わってくると思います。点灯には「カウント」という機能があるだけで、周りで起きている事象は切り捨てられています。けれど、ある部分に光が点くということは、その他の部分の光は消えている必要があるということ。光が点くことと消えることを等価に考えたとき、光ることだけに意味があるのか。そうでない部分にも意味があるではないのではないか、存在するとは本来そういうことなのではないか。このコンセプトはこれまでの私の作品を通してずっとあり、TIMES2019もその延長上にあると感じています。

八木笹岡さんの作品に共通するのは個人差があって、わかる人とわからない人がでてくるところですよね。個人の経験によって感じ方の違いが大きく出る。そういう意味では、通常の作品の「作品と鑑賞者」あるいは「作者と作品と鑑賞者」という関係性以外に、もう一つ「鑑賞者と鑑賞者」の関係もより強く生まれてきます。人間同士の対話はダイレクトで重要なものですし、わからない人はわかる人に聞きたいと思う。行動のコツや考え方を話し合うチャンスが生まれてくると感じます。

作品

笹岡前に展示した時に、複数の人で鑑賞していて気づく人と気づかない人がいる。気づいた人が「あっ!」と声をあげるんですね。すると他の人が「なに?何があるの?」というところから会話が発生する。作者としては、気づいた人にあまりネタバレしてほしくないのですが、わかった人は言いたくて仕方ないという現象が起こるんですよね。

八木良い映画が広がっていくことに似ていますね。ネタバレしていくと本来はおもしろくないはずです。けれど、わかった人同士が対話してくことによって良いものだということが広がり、見たい人やわかりたい人が増えていく。謎がある方が作品は魅力的に感じられますし「その時」がくるまで自分で味わうことができるのがこの作品の良い部分だと思います。

【特別対談】
アーティスト笹岡敬×富山県美術館 学芸員八木宏昌×UD川口竜広
「ビジネスとアートの新たな未来」

笹岡 敬

笹岡 敬Sasaoka Takashi

大阪産業大学 デザイン工学部 教授

80年代より『Waterシリーズ』『Luminousシリーズ』『Reflexシリーズ』などのインスタレーションで水や光、熱といった無機物とそれに関するプリミティブな原理や簡単な装置を使って余情性のある空間を作り出している。
この余情性とは文学的な意味ではなく、無駄を省いた単純な構造の作品が空間を分割することによって生み出される「場」の感覚と、装置が作り出す音や光を待つ微妙な「間」によって、見る者のなかに現れてくる意識の流れのことである。ドイツ、オランダ、ベルギー、韓国など国内外で展覧会多数。 98年にCASを数名で発足。2001年より特定非営利活動法人キャズ運営委員長。海外のオルタナティブアートシーンとの交流を進めている。

八木 宏昌

八木 宏昌Yagi Hiromasa

富山県美術館 学芸課長

1991年より、富山県立近代美術館学芸員として、国内外の近現代美術を中心とした展覧会に携わる。2000年から富山県水墨美術館学芸員として日本美術の企画展を担当。2010年に再び富山県立近代美術館に戻り、現在にいたる。